糖尿病性腎症・尿と病気

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糖尿病性腎症


糖尿病性腎症/尿と病気


     
§1  糖尿病性腎症とは/糖尿病性腎症/尿と病気


      
糖尿病の合併症には、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症などがあります。糖尿病性腎

      症は、続発性の腎臓病の中でも患者数は増加傾向であり、問題の大きな疾患といえます。糖尿病に罹患し、

      糖尿病性腎症を発症するまでには10〜20年かかると考えられておりますが、腎症を発症してしまいますと、

      末期の腎不全に至るケースは相当数に昇ります。 かつての透析導入の第1位は慢性糸球体腎炎でしたが、

      現在では糖尿病性腎症が 圧倒的な第1位を占めています。 糖尿病性腎症は増加の一途をたどっておりま

      す。 糖尿病性腎症の場合、透析療法導入後の生命予後が極めて不良です。 早期に発見し、早期に治療に

      かかれるか否かは、生命に関わります。











     
§2  糖尿病性腎症の症状/糖尿病性腎症/尿と病気


       糖尿病性腎症は罹患初期は殆ど自覚症状がありません。糖尿病性腎症は初期に蛋白尿は出ません。糖尿

       になって、数年後に、最初に現れる症状がアルブミン
尿です。 まず、極少量の微量アルブミン尿が出ます

       ので、この段階で、検査による早期発見が最短の検査で発見できるタイミングです。 糖尿病性腎症が進行し、

       
蛋白尿が出る前に微量アルブミンの段階で発見できましたら、 早期に治療する様にしましょう。 糖尿病性腎

       症は進行性の腎炎で、 発症しますと治癒の難しい疾患です。 末期の腎不全は 非常に辛い状態といえます。

       糖尿病で高血糖状態が長期間続きますと、血管は動脈硬化を起こす事により、 血液を濾過する機能が低下

       し、その結果、腎臓は障害され、 腎機能は低下して糖尿病性腎症になります。 (§3糖尿病性腎症の原因

       御参考にご覧下さい)糖尿病性腎症がこの様な増加傾向を示しているのは、糖尿病が増加している事を証明

       しています。 血糖コントロールを確実にする事は、 糖尿病性腎症に移行する事を抑制するためにも、極めて

       大切な事になります。 但し、 血糖コントロールの悪い人が全員糖尿病性腎症になるとは考えられておりませ

       ん。遺伝的な要因も関連しているのではないかと考えられております。


       (糖尿病では輸入細動脈の拡張は輸出細動脈より顕著であるため、糸球体高血圧になり易く、その結果、糖

       尿病発症初期に糸球体濾過量の上昇やアルブミン尿が出現すると考えられております。)





     
§3  糖尿病性腎症の原因/糖尿病性腎症/尿と病気


       糖尿病性腎症の主要病変部位は糸球体です。糖尿病に罹患し、高血糖の状態が続きますと、メサンギウム

       細胞にも大量のブドウ糖が流れ込みます。しかしこの大量のブドウ糖を処理しきれないため、ブドウ糖と蛋白

       質が結合した 糖蛋白をメサンギウム細胞が過剰に作り出す様になります。 これにより、メサンギウム基質は

       肥大し、 周囲にある糸球体の 毛細血管を圧迫してしまい、 血管内腔が狭まり、血流は悪くなります。毛細血

       管の壁には血液をろ過する小さな孔があります。これがフィルターの役割を果たしておりますが、毛細血管の

       壁が厚くなって、目が粗くなる事により、糸球体のろ過機能に障害 (大量の蛋白質が漏れ出すなど)を起こす

       様になります。これにより蛋白尿が出る結果になります。


       糖尿病では初期段階ではHbA1c(グリコヘモグロビン)などが生じますが、反応が進み終末糖化産物(AGE)

       が形成されるようになります。このAGEの作用で細胞外基質蛋白産生が亢進するとされております。メサンギ

       ウム細胞はAGEの受容体を有しているため、このAGEの産生阻害薬の開発研究が進んでおります。


       
* ご参考;このHbA1cはアマドリ化合物と呼ばれ、非酵素的糖化過程はアマドリ化合物までの段階が可逆的

       とされております。(血糖の長期コントロールの指標として用いられるHbA1cは血中のヘモグロビン蛋白にブド

       ウ糖が結合したアマドリ化合物です。)





     
§4  糖尿病性腎症の検査と治療/糖尿病性腎症/尿と病気


       糖尿病性腎症は進行は緩やかですが、第1期〜20〜30年と長い期間で確実に進行して行きます。糖尿病

       性腎症の場合は、極早期には蛋白尿は検出されません。微量アルブミン尿の場合には、20〜30r程度で

       も陽性反応がでますので、腎機能の低下を早期の段階で、発見する事ができます。 大切なのは、微量アル

       ブミン尿検査による早期発見の機会を作り (近隣の病院で検査可能です/糖尿病の方は腎症の早期発見に

       努めましょう。3ヶ月に一回が確認の目安です。 * 一般の健康診断では、微量アルブミン尿の検査は行って

       おりません)、早期に治療に取り掛かり、しっかり、堅実に治療に取り組み、機能維持のために、医師の指示

       を守り、毎日を送る事です。血糖コントロールはとても大切な事です。血糖コントロールが適切に対応されな

       いと、糖尿病の進行だけではなく、糖尿病性腎症の進行速度も速まります。



      
「糖尿病性腎症病期分類」 by 厚生労働省調査研究班


       
第1期(腎症前期);尿検査は正常であり、腎機能は保たれた状態です。血糖値のコントロールがうまくいか

       なければ、腎臓に徐々に影響が現れる様になります。 クレアチニン・クリアランス(GFR)は正常で、時に高

       値を示す事がある程度です。治療は血糖コントロールをしっかり行いたい。尿蛋白(アルブミン)は正常です。

       瀰漫性の病変は無いかあっても軽度です。


       
第2期(早期腎症期);尿検査では微量アルブミンが検出される様になり、GFRは正常で、時に高値を示す事

       があります。アルブミン尿が出ていても、腎機能は保たれているこの時期に、厳格な血糖コントロールや降圧

       剤などで治療をします。軽度〜中等度の瀰漫性病変を確認し、時に結節性病変の存在を確認します。


       
第3期A・B(顕性腎症前・後期);この時期には糸球体が障害され、尿蛋白は持続的に検出される様になりま

       す。GFRは正常(A期)〜低下(B期)です。 腎機能は低下し始め、高血圧やむくみなどの症状も現れる様に

       なります。 治療は厳格な血糖コントロールに降圧治療、摂取蛋白の制限・低蛋白食などで対応します。A期

       は中等度の瀰漫性病変を確認し、結節性病変は多くに確認します。 B期では瀰漫性病変は高度で、結節性

       病変も多くに確認されます。


       
第4期(腎不全期);蛋白尿は持続して検出され、GFRは著しく低下します(血清クレアチニン上昇)。腎機能は

       著しく低下し、腎不全の状態です。 厳格な降圧治療と低蛋白食を守り、末期の腎不全状態ですと透析療法を

       導入する必要が出てきます。


       
第5期(透析療法期);生命維持のための透析療法腎移植などで対応する事になります。



       * 厚生労働省調査研究班で作成された「糖尿病性腎症病期分類」は、主にアルブミン尿の程度と腎機能(糸

       球体濾過量/GFR、臨床的にはクレアチニンクリアランス/Ccrで求める)により、 病期設定されております。





     §4  糖尿病性腎症の治療/糖尿病性腎症/尿と病気


       医師の指示に従った血糖コントロールが肝腎ですが、身体の状態に合わせた、食事療法(蛋白質や塩分の

       摂取制限など)、 運動療法を中心として、 必要な場合には経口血糖降下薬、 インスリン注射で対応します。

       また、血圧のコントロールも同様に重要です。 血圧が高いのは、腎臓に大きな負荷、障害を与えますし、糖

       尿病の悪化も促がしてしまいますし、 糖尿病性腎症も進行もし易くなります。 高血圧が腎症の悪化因子で

       あり、血圧のコントロールが腎症の進展を阻害するのに有効である事は、知られております。高血圧の人は、

       医師の指示に従い、 アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンU受容体拮抗薬、長時間作用型

       Ca拮抗薬などの降圧薬を用いて対応します。最も大切とされておりますのは、降圧薬の種類よりも、長時間

       目標血圧を維持する事だと指摘されております。 日本で多用されるCa拮抗薬は主に輸入細動脈を拡張させ

       るため、 軽度の降圧では、 逆に糸球体高血圧を悪化させる可能性があると指摘されており、この場合には、

       充分な全身血圧のコントロールが必要であるとしております。(日本高血圧学会でも糖尿病の人は血圧を13

       0r/Hg-80r/Hg未満を目標にしております。 腎障害の人は130r/Hg-80r/Hg未満、蛋白尿の多い人

       は125r/Hg-75r/Hg未満)


     
糖尿病性腎症食事療法指導基準

病期 総エネルギー
(Kcal/kg・日)
蛋白質
(g/Kg・日)
塩分
(g/日)
カリウム
(g/日)
備考
第1期
腎症前期
25〜30 制限せず* 制限せず 糖尿病食を基本とし、血糖コントロールに努める、蛋白質の過剰摂取は好ましくない
第2期
早期腎症期
25〜30 1.0〜1.2 制限せず* 制限せず
第3期-A
顕性腎症前期
25〜30 0.8〜1.0 7〜8 制限せず
第3期-B
顕性腎症後期
30〜35 0.8〜1.0 7〜8 軽度制限 浮腫の程度、心不全の有無から水分を適宜制限する。
第4期
腎不全期
30〜35 0.6〜0.8 5〜7 1.5
第5期
透析療法期
HD;35〜40 1.0〜1.2 7〜8 <1.5 水分制限(透析間体重増加率は標準体重の5%以内)
CAPD;30〜35 1.1〜1.3 8〜10 軽度制限
                                                                   by 厚生労働省

     
*1 高血圧合併症では7〜8g/日 以下に制限する。




     
* メサンギウム細胞・メサンギウム基質;腎臓の糸球体は毛細血管の塊の様になっており、毛細血管と毛細血管

     に挟まれる様にして、その中心にメサンギウム基質とメサンギウム細胞により 毛細血管が固定されている構造に

     なっております。


     
* 微量アルブミン尿;。微量アルブミン尿は蓄尿しなければならないために、代替検査として米国糖尿病学会では、

     随時尿での アルブミン/クレアチニン日を使う診断基準を出しており、 日本でもこの診断に準ずる方法を採用して

     いる専門医もおります。20〜200μg/分or30〜300r/日 排泄されている尿が微量アルブミン尿と呼ばれます。

     糖尿病や高血圧、 メタボリックシンドロームが認められる患者さんでは、微量アルブミン尿を認める場合には腎障

     害の進行する可能性が高く、心臓血管疾患の発症頻度も高いとされておりますので注意が必要になります。


     
糖尿病性腎症早期診断基準;(微量アルブミン尿)の基準
測定対象 尿蛋白陰性か陽性(+1程度)の糖尿病患者
必須事項 尿中アルブミン値 30〜299mg/g・Cr 3回測定中2回以上
参考事項 尿中アルブミン排出率 30〜299mg/day or 20〜199μg/分
尿中W型コラーゲン値 7〜8μg/g・Cr以上
腎サイズ 腎肥大






     
* 終末糖化産物(AGE);advanced glycation end product 特有の蛍光をもつ黄褐色の物質。アマドリ化合物が

     化学反応を進行して、 形成される終末糖化産物で、この化学反応の段階は不可逆です。反応を経てAGEが重

     合、不溶性の性質を持ち、蛋白本来の機能、代謝は変性する。 糖尿病性の合併症や老化などとの関連性もあ

     る事が推測されております。












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